2014年2月23日日曜日

Nonprofit Board Fellows Programについて –NPO活動を通じてリーダーシップを磨く–

Class of 2015のHokuです。

UNC Kenan-Flaglerの特色の一つとして挙げられるのは多種多様なExperimental Learningの機会を豊富に与えられていることです。例えば、実存する米国企業に対してフィーを貰ってビジネス上の提案を行うSTAR(Student Teams Achieving Results)Project、その海外企業向けバージョンのGBP(Global Business Project)、世界各国の現地に赴き企業・NPO・政府関係者等を訪問するGIE(Global Immersion Elective)、交換留学と企業訪問がバランス良く組み込まれたDBI(Doing Business In)等々、Experimental Learningの機会を取り上げればキリがありません。今回はそのうち”Nonprofit Board Fellows Program”について紹介したいと思います。

本プログラムはKenan-Flagler Business Schoolの学生がUNC周辺のNPOのボードメンバーの一員として名を連ねて、その重要な意思決定のプロセスに参加することができるというものです。NPOは単なるボランティア団体ではなく、各州で登記手続きを行い、通常の企業と異なる法律の下でその活動を行っています。彼らは持続的にコミュニティに貢献することを目的としているため、一定の収入基盤が必要とされます。そのため外部から様々な有識者をボードメンバーとして招聘し、その活動における様々な課題や方針についてアイデアを提供してもらい、議論を重ね、最終的な意思決定を行っています。ボードメンバーには地元企業の役員、大学の教授、企業のオーナー、過去に会社を立ち上げて売却した起業家、別のNPOの創始者等々、いずれもそれぞれの分野でしっかりとした実績を残した人たちが名を連ねています。本プログラムに参加するKenan-Flagler Business Schoolの学生は投票権こそ無いものの、ボードミーティングに参加し、リサーチ結果やアイデア・意見等を述べることによってその意思決定に関与・貢献することができます。参加するNPOによって異なりますが、本プログラムに参加する学生はバックグラウンドと希望する分野を考慮されて2~5名程度でチームを組んで各NPOを担当することになります。期間はおよそ半年で、その間定期的に開催されるボードミーティングに参加する一方で、現場スタッフと個別にミーティングを行い活動内容の改善を提案していきます(各NPOによって参加方法・頻度は異なります)。

NPOから見たKenan-Flagler Business Schoolの学生を参加させるメリットは、実務経験もあり様々なビジネススキルを有する優秀な学生のアイデアを活用できることです。このプログラムはSTARプログラムと違いフィーを徴収することなく無償で参加するため、資金繰りに苦労するNPOが効率的にビジネススクールの学生にアクセスできるメリットがあります。また、将来のボードメンバーとして有力な候補者を見つけ出すことにも繋がります。一方で学生側のメリットは、ビジネススクールで習得したファイナンスやマーケティング等のハードスキル、リーダーシップやプレゼンテーションといったソフトスキル等をアウトプットに繋げる貴重な機会に恵まれることです。また、様々な実績を有するボードメンバーと直接コンタクトできるということもネットワーキングの観点から非常に魅力的です。そして何より、実存するNPOがどのような課題を抱え、どのように意思決定に至り、どのように問題を解決していくのかというプロセスを垣間見ることは、コミュニティの一員としても、将来のリーダーとしても、非常に有益な経験になることは間違いありません。

私は現在本プログラムを通じて地元の子供向け美術館を運営しているNPOに参加しています。「子供向け美術館」と言われて最初はピンと来なかったのですが、美術や工作等を通じて子供たちの創造性を育む目的で設立された団体で、主に幼稚園から小学生程度の子供たちをターゲットにしています。建物に一定のスペースを確保して、入場料を徴収し、現場スタッフの指導のもと子供たちは玩具・工作品・各種プログラムを通じて楽しみながら創造性を育てることができる、といったものです。どちらかというと「なんか色んなことができる面白い託児所」といったほうがイメージに合うでしょうか(別にガチンコの美術品があるわけでも無いですから)。私は美術館巡りが趣味で、加えて日本では子供たちと一緒に安全な野菜やお米を作るというNPOに参加していたため、その点を考慮してこのNPOを紹介されたと思います。チームは私とアメリカ人の2人です。

現在この美術館はより大きなスペースへの移転を計画中で、我々は現場のトップの方と協働してそのための資金集めやマーケティングのサポートをしています。前回のボードミーティングは建設中のスペースの一角で行いました。今期の予算の策定・計画から始まり、資金集めのイベントの計画や、新しい子供向けプログラムのアイデア、新スペースのコーディネートや料金設定等々、非常にリアルかつ生々しいやりとりに参加することができました。といっても別に重くるしいミーティングでもなく、そこはアメリカらしく(?)、ジュース片手にスナックをつまみながら時折ジョークを交えて楽しくディスカッションは進めていました(といっても資金繰りの議題の時だけは重苦しい雰囲気がありましたが…)。

もちろん良いことばかりではありません。このプログラムは正式な単位にならないうえにNPO側からフィーを貰っているわけでもなく、ほぼ完全に参加する学生の「やる気」に依存しています。従って参加学生が夏のインターン獲得に向けて苦労していたり、学校のクラスが忙しくなると、本プログラムの活動が疎かになる、といったリスクが存在します。また、NPOサイドの担当者のほうが忙しかったり、そもそも途中で交代してしまいコミュニケーションがなかなか取れない、といった事態も起こりえます。本プログラムに参加するNPOは毎年変更されますし、各NPOによって学生に求めるパフォーマンスの期待値は異なるため、大事なことはプログラム開始時に学生サイドとNPOサイドの双方で「何を期待しているのか」、「どういったパフォーマンスが求めれるのか」、「どの程度コミットできるのか」といった合意形成をしっかりと行っておくことだと思います。自分の置かれた状況を冷静に判断し、相手の期待値を推し量り、ズレがあれば交渉を通じて修正もしくはコミットメントを強め、お互いにとってWin-Winな関係を築く、こうしたことがリーダーには求められます。本プログラムにおいては学校サイドは学生とNPOのマッチングを行うのみで、それ以降は学生が自ら進んでプログラムをドライブしていく必要があるため、リーダーシップを磨くには格好のプログラムと言えます。

以上、簡潔ではありますが”Nonprofit Board Fellows Program”について紹介させて頂きました。「理論も大事だが実践はもっと大事だ」、「リーダーシップを磨きたい」、「実はNPOにも興味がある」、こうした思いをお持ちのアプリカントの皆様がUNC Kenan-Flaglerへの挑戦を考えて下さることを心から願っております。

0 件のコメント: